袖振れ合うも多生の縁352~ノンフィクション「冥界からの電話」、死者から電話ってほんと!?(Ⅲ)

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2018年11月末に出版された佐藤愛子さんの『冥界からの電話』は、現在もひそかなブームになっているようです。この世にとどまっている死者から電話が、又あの世から電話がかかってくるという、このノンフィクションは果たして本当なのか、それともあの世に行けない地縛霊からの電話やあの世に行った霊からの電話と称する嘘をつき続け、その虚構を真実と思う心を病む人間が為す茶番なのか、私なりに考えてみたいと思います。
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死んだひふみなる女の子から電話がかかり続けている高林先生の友人で精神科医池上先生の見解は、ミュンヒハウゼン症候群、俗に嘘つき病と言われている精神病であるひふみが、自身と兄の二役を演じているとのことですので、このケースの場合、ひふみはどんな心理であるのかを先ず考えてみましょう。

ひふみは高林先生の講演を聞き、

<感動したので教師になろうかと思っていたが、進路を変更し医師になりたいと決意した>

との手紙を書き送ってたとのことですが、赤字の部分は嘘ではないでしょうか。殆どの生徒がダサイ話・・・と白けて聞こうともしないのに、汗をかきかき懸命に話し続ける高林先生を、ひふみはちょっとカワイイじゃんと思った程度でしょうが、でも思慕の念のファーストステップだったのは間違いなく、日がたつにつれ初めの想いが膨らみ、恋する乙女の虚構を生き始めたのでしょう。そして手紙に苗字を書かず名前だけを書き、そして携帯の番号をさりげなく書き添え、繋がりを持ち続けようとしたと思われます。
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医者を志望するひふみを励ますべく高林先生は時々電話し、二人の会話の中で虚構は少しずつふくらんでいくのです。ひふみが電話で先生に話したことを要約すると・・・

<自分にはK大医学部在学中の兄がいて、親は二人も医大にやるのは学資が大変だから、自分は国公立の大学でないとやらせて貰えない。だから頑張って偏差値を上げないといけない・・・と猛勉強を始め、ぐんぐん偏差値がアップし、見事国公立の某医大に合格した>

と彼女は誇らしげに語るのです。

これって、一寸可哀相な私を頑張って超え、ステキな私になったという、よくあるパターンですよね。でも、ひふみか先生か、どちらが言い出したのかわかりませんが合格祝いに食事を・・・ということになるものの、ひふみは待ち合わせにやって来なかったのです。高林先生は、いまどきの若い子にからかわれたのかな・・・と苦笑せざるを得ませんでした。しかしこの後、虚構は爆発的に広がります。

ひふみの兄と名乗る人物から高林先生に電話がかかり、

<妹は先生との待ち合わせの日に交通事故で死亡した>

と青天の霹靂、思いもかけぬ事態が告られ、先生は驚愕するのです!
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ひふみは電話でなら、俳優が役を生きるように、医大合格の虚構を事実のように信じ込んで演じ、合格祝いの待ち合わせを約束出来たのでしょうが、電話を切ると逢って嘘をつきとおす程には精神を患っていなかったので、待ち合わせに出かけられなかったのでしょう。しかし、そのままコンタクトを断つには心残りで兄と偽り電話し、事故死した悲劇のヒロインにジャンプしたのでしょう。兄からその後も電話があり、ある夜かかってきた電話の最中、兄は気を失いひふみがとって代わったのです。

ひふみは、
<自分が死んだことは分かっているものの、この世を去り難く親の家に居着いている。そして先生とお話したいけど、兄の声を借りないと電話出来ないので、実家を離れ下宿している兄を家に呼び戻し電話させている>
と、心霊研究をしている高林先生の興味を掻き立てるのです!

しかも、ひふみは地縛霊になっているというのです!

死んだらハイそれまでと思っておられる方も多々いらっしゃるでしょうから、そんな方達には地縛霊なんて眉唾でしょうね。でも、偶然下の写真を見付けましたのでシェアさせて頂きます。
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亡くなった浮浪児の地縛霊が写っていたというもので、「ボクを見捨てないで」とキャプションがついていますが、少年の身体と階段が折り重なって写り、これって信憑性大(?)かな?

話を元に戻しますと、筆者は上記のひふみの言(赤字部分)は虚構だと思うのですが、あながち嘘とは言えない状況で、それは兄の電話の声がひふみに代わる直前、

バキーンと大木の倒れるような音が響き、電話を受けている高林先生の部屋の灯りが消えたのです。先生はブレーカーが落ちたのかとチェックしたのですがそうではなく、他の部屋もご近所の灯りも消えていないのです。

部屋の電気は消えたものの、すぐ元通りに点灯し、そして何と、ひふみの声が聞こえてきたのです!

ミュンヒハウゼン症候群の人が電話先の家の灯りを消すなど、超常現象を起こす力があるとは考えられませんから、高林先生も相談にのっている佐藤愛子さんも、この超常現象故にひふみは本当に亡くなり電話してきたと思えてならなかったのです。それだけでなく、兄は先生にひふみの気持ちを語っていたのです。

以前ひふみがこんなことを言ったことがあるんです。わたし好きな人がいるの。だけど付き合うことの出来ない人。年がごく離れているの。名前がお兄ちゃんと一字だけ同じなのよ・・・

好きな人がいる云々は本当だけど、兄に語ったのは虚構ですし、高林先生の名は圭吾で兄の名は圭太郎という一字が同じというのも勿論ウソで、先生と何か因縁づけたい、繋がりを持ちたいという思慕の表れでしょうね。

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それから又ある時、高林先生はひふみの供養のため頂き物の新茶を淹れ、これ又到来物の東京ばな奈を供えたのです。
10日後にかかってきた電話でひふみは、

先生の声がして、なんだかあまーい香りがして・・・

と話し出したのです!驚いた先生は、「届いたんだねぇ・・・東京ばな奈とお茶」と答え、ひふみの家は何処か知らないが、あの子は私が供えたお茶と菓子の香りを感じてくれたんだ・・・と感嘆したとか。

とても甘い、おいしいお茶でしたそれに東京ばな奈はわたし、大好きなの。ほんと、ご馳走さまでした」

高林先生は、ひふみにも兄にも東京ばな奈とお茶を供えたことを喋っていないのに、ひふみには甘い香りが届いていたのと、先生の声(読経の声か?)がして・・・というのは本当なのか、幻聴なのか分かりませんが、東京ばな奈が大好きというのはウソっぽいですね。

それから兄に代わり母親が電話してきた事もあり、これは母親ではなくひふみが母親を演じているのでしょう。兄は電話を終えると100メートル全力疾走したような疲労感に苛まれ、ひふみの電話して欲しいとの念にも易々とは応え難くなったから母親にかけさせたとひふみは言ったのですが、これはひふみが;霊媒師の漫画本を読みかじり、霊媒をすると疲労する事を知ったからなのか、それとも自分が兄を演じた後はかなり疲れると思ったからなのでしょうか。
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高林先生はひふみが母親をも霊媒として使うようになったので何とかしなければと決意し、電話のかかるのを待ち続けていました。そして待ち受けた電話がかかったので、精一杯力を奮い起こし、お兄ちゃんやお母さんのエルギーを奪ってはいけないこと、このまま続けると二人とも病気になってしまうこと、ひふみちゃんは霊界へ上がって修行を積んで、両親やお兄ちゃんを助ける立派な霊になってほしいこと等々を切々と熱く説いたのです。

わかった、わたし、行くわ。

ひふみは先生の熱意に打たれ、地縛霊を止めようと本当に思ったのでしょう。
この後、ひふみからは長らく電話がなく、先生は本当にあの世に旅立った・・・と安堵したのです。
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ですが、数ヶ月後電話がかかってきたのです。しかも兄や母親が媒介でなく、ダイレクトに自分からかけてきたのです!そして彼女の語るところによれば、

なんだか先生に呼ばれてるような気がしたので、電話したの

と言うのです。「呼ばれてる気がしたから電話した・・・」と言うのは自分からかけると安っぽく見られると思ってのことでしょうし、兄や母を演じないで自ら電話したのは、自分はあの世のランクが高い処に上がっているから兄や母を媒介としなくてもよい霊力を持っている・・・と考えてのことでしょうか。私がそう思う根拠は、

・・・わたしを導いてくれてるのは、見上げるように大きく、髪を長く背中に垂らして黒い舟のような形の木の靴を履いて、勾玉の首飾りをしているの

と言うひふみの言葉からです。ひふみにそう言われて高林先生は、そのお方は天照る大神ではないのか!? 彼女は霊界よりずっと上の階層である神界にいる!と興奮してしまいます。

先生は夢中になって神界の様子を聞き出そうとしました。そんな先生の矢継ぎ早な問いかけの途中、電話が唐突に途切れてしまいます。根掘り葉掘り聞かれひふみは戸惑い、神界のことを用意周到に調べてなかったので答えられなくなり電話を切ってしまったのでしょう。
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神界のことをつぶさに知りたくて、高林先生はひふみからの電話を待ち続けていたのですが、数週後電話がかかってきたのです。でもひふみではなく兄からでした。自分からでなく兄を装い電話してきたのは、前回唐突に会話を打ち切ってしまった心のわだかまりなのでしょうか? それは兎も角先生は、

「ひふみちゃんからの電話を、ずっと待ち続けてたんだ。」

そう意気込んで言ったものの、良い歳した男が若い女の子からの電話を待ってるなんて、ヘンな風にとられちゃマズイとの思いが横切り、エクスキューズを口にしたのです。

「いや、私はあの世のことを、霊界や神界のことを知りたいだけなんだ。だから彼女からの電話を待ってたんだ。私は心霊現象を科学的に研究してるからね。」

その時です。電話の向こうからシクシク泣く声が微かに聞こえて来ました。兄の、いえ、ひふみの泣く声が聞こえて来たのです。

先生、わたしはね、わたしは今まで、先生はわたしと話をするのが楽しいから、それで相手をしてくれているのだと思っていました・・・そんな心霊の研究のためにわたしの相手をしていたなんて・・・ちっとも知りませんでした・・・わたし先生とお話しするのが楽しかったから・・・楽しいからしゃべってるだけ。それだけ・・・

この彼女の述懐は本音ですね。

「あのね、ひふみちゃん、聞いてくれる・・・」高林先生は言葉を続けようとしましたが、ひふみは聞かず、

これで終わり、もうおしまい・・・。」

哀しげな寂しげな少し怒ったような泪声を最後に、電話は切れてしまいました。そして数ヶ月・・・ひふみからも兄からも電話はかかってきませんでした。あれで終わりなのか?あれって一体なんだったのか!?

高林先生の心にふと疑いの気持ちが浮かび、疑惑の黒雲は急速に翼を広げ、本当に死者からの電話だったのかを検証してみたくなったのです。そこで、ひふみが亡くなった交通事故の記事が新聞に載っていないかをつぶさに調べましたが、死者を出した事故なのにどの新聞にも全く記事になっていませんでした。それならと先生は、警察上層部にいる知人に事故の有無を問い糾したのですが、該当する事故はない!との返答でした。それだけでなく兄、舟木圭太郎はK大医学部に在籍しているとのことだったのですが、K大の知人に調べて貰うと、そんな学生はいないと言う。又、兄からかかってくる電話は番号非通知で教えてくれと頼んでも、その内いつか・・・といつも逃げてしまう有様でした。それやこれやを考えると、高林先生も愛子先生も、ひふみは矢張りミュンヒハウゼン症候群だったのではないか・・・と悔しいけれど、残念だけど、そう思えてしまうのです・・・。

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その後、ひふみから電話がかかってくるとはなかったのですが、兄から電話があり、その際高林先生は、キミはK大に在籍していないじゃないか!?と問いつめたのです。すると兄はしれっと中退したんですと・・・そんな態度に些か腹が立ち、退学したことをご両親はご存じなのか!と詰問すると、ぶすっと無断で・・・との返答。親の心子知らずとはこのことだ!と些かならず立腹し、勝手気儘も程々にしなさい!と怒鳴りつけてしまったそうです。それで電話が切れたのですが、ひと月近く経った頃兄から電話があり、今迄と違い真面目に礼儀正しく謝ったとか。

先生のようにあんなに一生懸命怒ってくれる人は、今まで一人もいませんでした。生まれ初めて怒られました。親父からあんなふうに怒られたことはありません・・・

と涙声になり絶句したそうです。この謝罪は嘘でなく、真摯なものでしょう。

尤も兄であるというのは虚構でしょうから、ひふみの本当の心情でしょう。高林先生は今ならまだ復学可能だよとやり直しを勧めたのですが、

ぼくは・・・もう後戻りできません。進むしかないんで・・・このまま進みます。

と涙ながら決意を語ったとか。これも兄の言葉ではないから復学するしないの問題ではなく、高林先生にすべてを明らかにすることなく、このまま進む、先生とさよならする、でも嘘つきは止めます・・・というひふみの告白だと私には思えるのです。これ以後、兄からは勿論ひふみからも連絡は無いそうです。

此処まで結構長くなってきましたが、最後に、私にはこの「冥界からの電話」が、ミュンヒハウゼン症候群という心を些か病んだ女の子の演じた虚構に過ぎないとは思えないのです。然らば何なのかというと、

『高林圭吾よ、審神者(サニワ)たれとの神意に依る虚実皮膜なる疑似体験及びミュンヒハウゼン症候群治癒、癒しへの歩みである』

と推論したいのです。つまり、舟木ひふみちゃんは高林先生がサニワになる為に遣わされ、先生はサニワの道を歩み始め、ひとみは虚言症から癒されるという、すべてのことには意味があるという精神世界のスピリチュアルな事例ではないでしょうか。

え、そんな推測、ワンちゃんも笑ろてるがな。そらどうも、スイマセン。

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あ、そうそう、佐藤愛子さんは締めくくりに「チベット死者の書」の一文を書かれています。

死ぬことを学ぶことによって
汝は生きることを学ぶだろう。
死ぬことを学ばなかったものは
生きることを何も学ばずに死ぬことになるだろう。

これって深~い意味がありますよね。現在日本は平均寿命が益々のびているものの、<生きること>のみを想い、<死ぬこと>に想いを馳せていません。ワタシは佐藤愛子さんの「冥界からの電話」を読みブログを書くにあたって、<死>について少しは考えさせられました。ではでは、長々とお疲れ様でした、ハイ。


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