袖振れ合うも多生の縁367~今宵は当年(とうのとし)初つの満月なれば、謡曲「羽衣」について蘊蓄をば傾けん~

満月1.jpg
今夜は今年初めての満月ですね。満月でワタシがふと思い出したのはお団子、いえ、謡曲の「羽衣」です。「羽衣」のあらすじは・・・

春のある日、漁夫白龍は三保浦で一枚の美しい衣を拾う。そこへ現れた持ち主の天女が衣を返してくれと言うが、天人の羽衣と知った白龍はこれを惜しみ返すのを渋る。天女は衣が無くては天界へ帰ることが出来ず、月の都を懐かしみ涙する。その姿に同情した白龍は、名高い“天人の舞楽”を舞うてくれるならと衣を返す。天女は羽衣を身にまとい、富士山を背に三保浦で天人の舞を舞い、円く丸く満ち翳ることのない望月を舞う天女は、人々の幸せを叶えようと数々の宝を降らせ、人と大地を祝福し天に帰り往くのでしした。

漁師白竜.jpg
羽衣の天女1.jpg
羽衣1.jpg
天女の舞1.jpg
処で、お能では、漁夫が天女に返している羽衣は上の3葉目の写真で分かるように、練色(ねりいろ。漂白する前の絹糸の色)のようですが、謡曲を読んでいるとその羽衣は黒衣であることが分かったのです。え、黒い羽衣!?
皆さん、一寸信じられないでしょうから、その部分の詞章を抜き書きしてみます。冒頭、ワキの漁夫白龍の名乗りは・・・
『これは三保の松原に。白龍と申す漁夫にて候。萬里乃好山に雲乍ちに起り。一樓の明月に・・・』
この頃は名月、つまり満月だったのですね。そして、その後シテの天女が現れ、漁夫に羽衣を返して欲しいと懇願するシーンなどあって・・・
地謡『白衣黒衣の天人の。数を三五にわかつて。一月夜々の天乙女。奉仕を定め役をなす。』(白衣と黒衣の天女がそれぞれ3×5=15人ずつ住み、交代で舞うことで月を満ち欠けさせている)
シテ『我も数ある天少女』(私もこの三十人の天人の一人です)
このように記されています。つまり、この天女は黒組で非番だったから、美保の松原に降りて来て、脱いだ黒衣の羽衣を漁夫に取られたのです。でも、白衣の羽衣を着た15人の天女が舞っているのが満月で、白衣14人黒衣1人、白衣13人黒衣2人、白衣12人黒衣3人・・・と順次交代していくにつれ月が欠けていくなんて、なんだかロマンチックですよね。
月の変化.jpg
下の写真のような新月になると、黒衣の天女達15人が舞っているという訳です。
新月1.jpg
新月2.jpg
この謡曲「羽衣」が出来たのは、多分鎌倉時代の末でしょうが、その時代に月の満ち欠けが28日でなく30日とされてたなんて、結構暦は進んでいたのですね。
満月5.jpg
満月4.jpg
満月3.jpg
さあ、今宵月をとっくりと眺め、白衣を纏うた天女たちが舞う姿を、眼(まなこ)で、いえ、心でイメージしてみましょう。ではでは。