袖触れ合うも多生の縁389 ~深く静かに哀しみが心の奥底から湧き上がる絵本、それが「ZENOBIA」です。~

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『ZENOBIA(ゼノビア)』は、シリア内戦を生きる少女を描いグラフィックノベル(長いストーリーを備えたコミック)で、2016年11月にデンマークで出版されて以来、世界15カ国で翻訳され数々の賞を受賞しています。そして、この本を日本でも翻訳出版したいと、クラウドファンディングが始まり、2019年10月に出版されました。発起人は、『ZENOBIA』の著者であるデンマークのMorten Dürr(モーテン・デュアー。写真下)さんの留学時代からの友人、荒木美弥子さん(写真下の下)で、偶然SNSでモーテンさんに再会し、彼が児童書作家になったことを知り、本や海外アートが好きな荒木さんは、「どんな絵本なの? 見せてほしい!」と連絡したところ、送られてきたのが『ZENOBIA』でした。

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【あらすじ】
シリアのある小さな村の少女アミナは、大好きなパパとママと3人で、貧しくても幸せに暮らしていた。でも、シリア内戦が刻々と近づいてきていた。
ある日、アミナはひとりでお留守番をしていた。パパとママが帰ってきたら食べて貰おうと、食事の支度をして待ち続けた。ずっと、ずっと待っていた・・・。
家の扉がノックされた。パパとママが帰ってきたんだ!
ドアを開けるとおじさんだった。
「パパとママはもう帰ってこない。おじさんと船に乗って外国に逃げるんだ!」

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でもお金が足りなくて、アミナひとりボートに乗ることになった。
そしてボートは荒波に襲われ転覆し、アミナは深い深い海に沈んで行った。
「広くてなんにもない」
「ここならだれにもみつからない」
アミナはママとかくれんぼしたことを思い出していた。
「アミーナ、わたしのアミーナはどこ?」
「ここだよ ママ 」「わたしは海の中」
ママがわたしをみつけて、一緒にお料理したことを思い出していた。

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そして、勇敢なシリアの女王ゼノビアは、ローマ帝国にも屈しなかったと話してくれたことも思い出していた。
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アミナがくじけそうになった時、お母さんはよく「ゼノビアのように強くなりなさい」と元気付けてくれたのだ。
でも・・・
「広くてなんにもない」
アミナが見たのは、様々な藻が絡み魚たちの住処、撃沈された艦船ゼノビア号の残骸だけだった。

子どもの目線で描かれた不条理が、静かな哀しみとともに、ワタシの胸にじわじわっと迫ってきました。言葉を出来るだけ少なく抑え、繊細なイラストで紡がれた『ZENOBIA』のメッセージは、国を超えあらゆる世代の人々の心に、戦争の哀しさ愚かさを投げかけてきます。

『ZENOBIA』の著者デュアーさんは、この本の制作動機を次のように語っておられます。

第1に、人々に立ち止まってゆっくり考えさせることです。
ソーシャルメディアで難民について議論する代わりに、この本を読んで静かに考える時間を持って欲しいのです。ただ立ち止まって考えてみて欲しい。「難民になるとはどういう意味だろうか?」「自分がそのような状況にあったとしたらどのように感じるだろうか?」と。
第2に、私は子どもたちにも読んでもらえる本にしたかったのです。
なので、絵が大きく文字の少ない、とてもシンプルな本にしました。世界で何が起こっているのかについて子どもたちと話すことは非常に大切だと思います。子どもたちはどんな方法あっても、情報を見つけることはできます。例えば、インターネットで難民や世界の他の問題についてのニュース記事を見つけるでしょう。しかし、オンライン記事は彼らを混乱させたり怖がらせたりするかもしれません。
ですから、本がいいかもしれませんね。彼らはこの本を読んで、「この本は何について書かれているのか」、「この本の中で何が起こっているのか」について、大人に尋ねることができます。
これら2つの理由で私は本を書きたかったのです。

そう、デュアーさんの意図されたことは、この本のどの頁にも見られると思います。ですからワタシに孫がいるなら、是非ともプレゼントしたいですね。
ではでは。
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